ツバメ物語・空を夢見た子ツバメ [ツバメ物語]
□□□□□ ツバメ物語 □□□□□
(空を夢見た子ツバメ)
-台風10号-
時折り強く、雨が降っています。
「今夜、大丈夫かな?」
夜11時を過ぎ、日付が変わりそうになった頃。
もう一度、巣を見上げてから寝たのでした。
雨戸に吹き付ける雨の音と、風の音でなかなか寝付けませんでした。
日付が変わった2時半、ついに強い雨の音が気になって心配になり、玄関を開けました。
雨が玄関扉まで吹き込んでいるものの、とくに変わった様子はありませんでした。
玄関への行ったり来たりは、明け方の4時を過ぎた頃まで3回ほど続きました。
「来てー!」
mamaのその声で、飛び起きたのは5時をちょっと回った頃でした。
「これじゃ、あんまりに可愛そうだよ。」
「見て、死んじゃっているよ。」
悲しそうに叫んでいるmamaの声。。。
「えー、どうしてこんなことに。」
さらに、mamaが訴えています。
私の目の前には、ツバメの糞よけの為にと置いた板が倒れていました。
その板の端から、羽が少し見えています。
それを見たときに、すぐに「はっ!」と、しました。
すぐに板をどけてあげると、なんと仮の巣に居るはずの子ツバメが、横たわっていたのです。
すぐに、死んでしまっているのが分かりました。
両方の翼を、いっぱいに広げて。。。
それは、まさに空を目指そうとして羽ばたいているかのようです。
何度かの突風で仮巣から落ちてしまい、その上に板が被さってしまったのでしょう。
引き物が飛ばないように、小石をすみに置いてあったのですが残酷にも板は、その石に乗っからずに子ツバメの上に乗ってしまっていたのです。
餌が充分足りていたなら、羽ばたいて脱出できたかもしれません。
でも、この子ツバメには重くのしかかった板を振り払うほど体力が無かったのでしょう。
ましてや、その板は雨で叩きつけられていたのです。
苦しかったに違いありません。
2人とも、ショックでした。
涙が溢れてきました。
「頑張ってたのにね。」
この言葉は、子ツバメと私たちの両方に向けたものでした。
「雨が小降りのうちに、埋めてあげようね。」
私は、他の子ツバメと同じようにカスミソウの脇に埋めてあげました。
●心配そうなツバメ達
空では、沢山のツバメ達が見ていました。
きっと、親ツバメもいることでしょう。
「悲しげだね!」
「うん。」
「ごめんな!」
そう、ツバメ達に言い聞かせるかのように見上げました。
暗い雨空の下、いつまでもツバメ達はそこにとどまっていました。
台風10号は、日本各地にひどい被害をもたらして行きました。
---つづく---
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