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ツバメ物語・空を夢見た子ツバメ [ツバメ物語]

□□□□□ ツバメ物語 □□□□□
(空を夢見た子ツバメ)

-小さい命-

あれから、1か月が経ちました。
また、新しい命が誕生したようです。

しかし、今度生まれた子ツバメはあまりに元気が良すぎて、巣の外に落ちてしまったのです。
まだ、毛も生え揃っていないのに。。。

「ツバメが、落ちてしまったの。」
ママが出かけて帰って来たときは、もう、冷たくなっていたそうです。

「そんなー!」
雛を見れなかった私は、ちょっと、ショックでした。

「何羽生まれたのかな?」
「他の雛は、どうしているんだろう。」
まだ見ぬ雛が、心配でした。

1週間後、親ツバメから一生懸命に餌を貰う子ツバメの姿が、見られるようになりました。


●新しい命たち

子ツバメは、3羽のようです。
その子ツバメの所に、2羽の親ツバメが餌を運んでいる姿は、感動的でもあります。
時折り出入りする私たちを、威嚇するかのように、低空で近くまで飛んできます。
その後は、そばの電線から見守っているのです。

数日して、会社から帰宅するとママが大慌てをしていました。
なんだ、どうしたのと見るとそこに、子ツバメが居るではありませんか。

「どうしようか?」
「怪我をしていない?」
「大丈夫みたいだけれど。」
「それにしても、この子どうやって巣にもどそうか。」
「直接触っちゃだめだよ!」

玄関上の巣は、思ったほど低くはなかったのです。

「巣まで、けっこう高さがあるからなー。」
「直接巣には戻せないから、そばに仮の巣を作って置いてあげようか。」
「うーん。。。」
「頑張るんだぞ!」

子ツバメを囲んで、願うようにそう呟きました。


●巣から落ちた子ツバメ

親ツバメが、時折り心配そうに鳴いています。
私たちは、箱に入れて巣のそばに貼り付けてみたのです。


●仮の巣の子ツバメ

子ツバメは、1日に何度も落っこちて心配が絶えませんでした。

「子ツバメが、落っこちていたので見張っていたよ。」
「カラスに、食べられちゃうといけないからね。」
「ありがとう。」

近所の子供達が落ちたのに気がついて、私たちの帰りを待っていてくれました。
そんなことが、何度か続きました。


●玄関上の子ツバメ

異変に気がついたのは、2日後でした。

親ツバメが運んでくる餌は、1番元気な子ツバメが沢山食べているようです。
3羽の大きさに、明らかに違いが出てきているのでした。

「ねえ、気が付いた?」
「1羽が、動かないようだけれど。。。」
「もしかして、餌食べれていないんじゃないかな。」

私たちの心配は、その後あたってしまいました。
巣の中に居た子ツバメ2羽のうち、1羽が死んでしまったのです。
たぶん、親ツバメの餌を取れなかったのでしょう。

「死んじゃっているの?」
「うん、可愛そうだけれど、このままにして置けないからね。」
「巣から出してあげよう。」
「とどく?」
「何とかするよ。」

子ツバメに手が届いて、持ち上げたときに「はっ」と、しました。
死んだ子ツバメの片足は、しっかり巣をつかんだままだったのです。
私は声がでませんでした。
「・・・・」
「可愛そうだったね。」

とうとう、子ツバメは2羽になってしまいました。

親ツバメは、相変わらず残った子ツバメに餌を運んできます。
仮巣の子ツバメといえば、親ツバメが来ると精一杯の声を上げて、餌をねだっています。


羽ばたきながら、子ツバメは。

「こっちだよ。」
「こっちにいるよ。」

とでも言っているかのようでした。

「おーい、また落っこちているよ。」
さっき、仮巣に戻してあげたばかりなのよ。」

相変わらず落っこちてばかりの子ツバメを助けたのは、今夜台風が来るという夕方でした。
餌の足りない子ツバメはまだ産毛が多くて、捕まえようとする指を見て大きな口を開けます。
人間の臭いを移さないようにと手袋をはめていますが、その指を餌と思うのでしょうか。。。

「お前、早く大きくなれよな。」
「あまり世話を、やかせるんじゃーないよ!」
「どれどれ、はい、チーズ。」

何されるのか良く分かっていない子ツバメは、ちょこんと玄関前のたたきに、佇んでいました。

携帯にその可愛い姿を納めたのが、まさか、最後のお別れとなってしまうとは想像も出来ませんでした。

---つづく---

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